* エッセイ集 *

2002年5月1日
・・・早すぎた桜の開花・・・


 今年の初めに話題になった「世界がもし100人の村だったら」という本を買った。ベストセラーで、どの本屋に行っても一番見えやすい店頭に置かれてあった。アメリカのある教師がEメールを通じて自分の教え子たちに発したと言われる短編のエッセイが一人歩きして最終的にこのような素敵な絵本になった。

 最初は単に世界63億の人口を100人に置きかえただけの、統計学的な本だとばかり思い、1ページ目をめくった。ほんの数分で読んでしまえる内容だが、あまりにショッキングな内容なので、どんどん引き込まれていく。その最後の部分にさしかかったとき、心からの感動がこみ上げてきた。実はこの本は「愛と平和」を訴えるメッセージだったのである。最後の一節が印象的だった。「もしもたくさんのわたし・たちが、この村を愛することを知ったなら、まだ間に合います。人びとを引き裂いている非道な力から、この村を救えます。きっと。」

 そして、2月の初めには、この流行にあやかってか「日本村一〇〇人の仲間たち」という本が出版された。二番煎じかな?と思いつつも、ついつい買ってしまった。こちらは日本人の生態系を、風刺や皮肉を交えながら、かなり際どいところまで掘り下げている。教育問題や自殺の背景などを投げかけると同時に、これまで日本という村の中で、日本人がどうやって生きてきたか、また21世紀をどう生き抜いて行けば良いのかを示唆している。そして日本の未来に対しての夢を、筆者が熱い思いとともに語っている。

 3月になって今度は「世界がもし100年の物語だったら」という本を見つけた。誕生から46億年の地球の歩みを100年に縮めた物語になっている。人類の誕生はいつごろなのだろうか。95年くらいかな?と思いつつ、本の帯を見てびっくり。何と99年12月1日だというのだから。迷わず買ってしまった。電車の中で読み終わり、早速自宅に帰ってから小学校を卒業した長男に朗読させた。声に出しても10分ほどで読み終える内容だが、最後は大晦日の午後11時59分59秒、NYの貿易センタービルに飛行機が激突する瞬間で文が閉じられている。

 地球は誕生から99年11ヶ月をかけてゆったり、ゆっくりと進化し、成長して豊かな惑星になった。ところが12月に人類が登場して以来、道具を使うようになり、知恵がついてどんどん人口が増えた。しかしその一方で自然を破壊していくことにもなったのである。最後のわずか1ヶ月の急激な変化が、地球環境の悪化をもたらしたのだ。そのことを知らしめると同時に、この本は前述の2冊よりも、より環境問題について深く考えさせられる内容だった。

 「あと50年で石油がなくなるんだよ。そうすると車は走らない、飛行機も飛ばない。化学繊維も無いから服も作れない、石けんも、何もかも無くなってしまうよ。あと50年で南極の氷が溶けて、今住んでいるこの家も海の中に沈んでしまうかも。」そう子どもたちに話すと、一番下の息子が「じゃあ僕たちはみんな死んじゃうの?」とベソをかき出した。「そうならないように、世界中のみんなで地球を守らなくちゃね」と励ました。「戦争やテロなんてやってる場合じゃないよね」とも。

 今年は春が早くやってきた。どの地方も桜の開花日が観測史上もっとも早くなったという。とても憂鬱な開花報告だった。満開の桜の木の下で迎えたはずの入学式、今年は桜が散っていた。桜祭りの頃に桜は無い。観光客を見込んでいた地方は大番狂わせを強いられ、数十億円の損失とか。早く暖かくなったと喜んでいられない。すでに南極の氷山が割れ始めたとの報道が、最近あったばかりた。地球の温暖化はますます深刻になってきた。地球を守ることを今すぐに始めないと、もう間に合わない。




エッセイのページに戻る



Takubo's Home Page 最初のページへ
【クラシック音楽情報センター】最初のページへ