田久保 裕一 の “エッセイ集”


2001年4月1日
・・・ウィルス感染・・・


 とは言ってもコンピュータのウィルスである。 二月の末日、ふと迷い込んできた差出人不明、タイトルも無いメールの添付資料を開けてしまった。その瞬間、液晶画面の色がパッと変わり、十六色になってしまった。そんな設定はしていないのに、おかしいと思い、いろいろと試してみたが結局直らない。それどころかどんなアプリケーションを開いても「不正な操作を行ったので強制終了します」という冷たいメッセージが流れてしまうのだ。途方にくれて、翌日メーカーに問い合わせてみたところ、電話で誘導してもらいながら、あるファイルに達したところで「それはウィルスにかかりました」と宣告を受けた。もちろん初めてのことでウィルス撃退法をファックスで送ってもらった。病原菌のそれと同じで、まず健康なパソコンで「ワクチン」と呼ばれる3枚のフロッピーをつくり、そのディスクを、ウィルス感染したパソコンに送り込んで撃退するというもの。その日の深夜、パソコンに詳しい親友の家に駆け込んだ。彼のおかげでウィルスは除去できたものの、一度壊れてしまったファイルはもどらない。ちょうどその頃は[確定申告]の真っ只中だったので、重要な資料がたくさん入っていた。しかしバックアップを怠っていたので、さあ大変。こうなったら再インストールしてコンピュータを真っ白に、きれいにするしかない。ウゥルスにより周辺機器が使えなくなってしまい、そのために膨大な資料をバックアップするために、フロッピー30枚を投入して作業をはじめた。何日間、何十時間パソコンの前に座っていたのだろう。女房もあきれ顔というより、切れる寸前?結局新しいノートパソコンを購入してバックアップができたことを確認してから、前のパソコンを白紙に戻した。

 画面上とはいえ、脳みそがどんどんゼロになっていく様子は、ちょっと淋しい気がした。パソコン初心者のくせに、日頃から電子頭脳を過信してウィルス対策などのケアを、まめにしていなかった罰が下ったのだろう。コンピュータウィルスとは言えど、これは人間の体調をも崩してしまうくらいエネルギーを消耗するのもだった。それ以来、きちんとバックアップをし、ケアを欠かさないようにしている。ベテランの方にはこんな話はお粗末な笑い話にしかすぎないだろうが、初心者の皆さん、くれぐれもお気をつけ下さい。

 と、こんな話を書いていた矢先、今度は本当の、しかも強烈なウィルスに襲われた。5日前から高熱が続き、どんな手段を講じても下がらない。気は焦るばかり。食欲も無く、体力も消耗してしまった。この原稿を書いている今も、床に伏している状態である。健康管理ができないのは、プロとしては失格。この5日間で何十いや何百人の関係者の方にご迷惑をかけてしまったことだろう。胸が痛む。反省しきりである。

 あたりまえのことだが、病に倒れてあらためて健康であるありがたさを知る。同時に、やはり人間きちんと日ごろから休みをとらなければ、必ずツケがたまって大きな禍を招いてしまうこと。 身にしみた一ヶ月であった。


エッセイのページに戻る



Takubo's Home Page 最初のページへ
【クラシック音楽情報センター】最初のページへ