田久保 裕一 の “エッセイ集”


2000年9月1日
・・・マイブーム・・・


 私の自宅から徒歩六百歩くらいのところに、習志野では名所となった「谷津干潟」がある。以前は荒れ果てていた干潟だが、市民の手によって浄化され、平成九年にラムサール条約が締結。鳥獣保護区域として国からの指定を受けるまでになった。私の作曲した「翼に愛を」(作詞はふちさわまさき氏)は干潟のテーマソングとなり、観察センターの閉館時の音楽として毎夕流していただいている。

 一周約三、五キロメートルの外周路も整然と整備され、今や市民の憩いの場、格好のジョギングコースになっている。休日ともなると全国から野鳥愛好家が多数訪れ、観察や写真撮影で賑わっている。

 ウォーキングには絶好のロケーションが、自宅からこんなに近くにあるにもかかわらず、忙しさにかまけて私は今までに一度も一周したことがなかった。この夏一週間ほど仕事がオフだったのをきっかけに、毎食後この干潟を歩いてみようと意を決して取り組んでみた。帽子にサングラス、Tシャツに短パンという、燕尾服を着て指揮台で棒を振っている姿からは、およそかけ離れた出で立ちで干潟を歩く。

 潮の満ち引きや野鳥の憩う姿を観察しながら調子の良いときは二周。そのうち一周は妻を誘ってたわいもない会話をしながら、また時には子供たちに自転車で伴走させたりして歩くと、一周の三十分があっという間に感じられる。最近では勉強中の曲をMDにダビングしておき、それを聴きながら一周することも。

 半周ほどするとじんわりと汗がにじみ出し、一周終わるころにはもう汗だくだ。いつも大汗をかいて指揮をしているが、運動後の汗はすがすがしい。家に着いてシャワーを浴びた時の爽快感は、健康であることの喜びを喚起させる。

 始めてから三日目くらいが筋肉痛で一番きつかった。毎日二万歩である。ゴルフを一ラウンドしてもせいぜい一万三千歩くらいだから、普段歩き慣れていない私にとって、 
毎日の速歩はつらいものがあった。しかし一週間もすると不思議なもので体が慣れてくる。食後に歩かないと、どうも鈍ってしまうようで、自然な流れで歩く準備をしてしまうのだ。以前は家の周辺を深夜に歩くことさえ、億劫だったのに、この数日で何と自分の気持ちに変化があったことか。食事も美味しいし、慢性の肩凝りの解消と、いくらかのシェイプアップに期待しつつ、また今日も干潟に向う。

 歩く行為は、足の裏の刺激にもなり、血行を良くするし、ストレス解消にもなると今更ながら気付いたのであった。

 車社会となった現代では、歩く機会が極端に少なくなっている。いくら忙しいと言っても、一日の中で余った時間はまだまだある。時間は作るもの、見つけるもの。ウォーキングは健康法のひとつとしてこれからも続けていこうと、これはちょっとした決意表明。 
問題は外泊の多い私の生活。ひと月の半分はホテル暮らしだが、朝少し早起きをしをて、朝食後にホテルのまわりを歩くだけでも続けてみよう。今後は、キャスターケースの中にウォーキングシューズや着替えをいっぱい詰め込んで旅に出ることに。さらに荷物が重くなるなあ・・・。


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