田久保 裕一 の “エッセイ集”


2000年3月1日
・・・マナーを考える・・・


 昨年、筑波大学のオーケストラに客演したときのこと。演奏会が終わって打ち上げのパーティに参加した。場所はつくば市内のホテルの宴会場だったが、行ってみてびっくり。何と学生全員がリクルートスーツに身を固めて出迎えてくれたのだった。ここはどこかの会社の説明会かと錯覚するほどだった。筑波の学生はほとんどが寮住まいか、近くに下宿をしているので、演奏会終了後、一度家に戻って着替えてからこの会場に集合したそうだ。

 立食のパーティが始まっても、学生たちは周りに用意されている座席には座ろうとしない。傍らに同席しておられた顧問の先生に、学生の身だしなみのことなどを問うてみると、こうしたパーティでは「きちんとした服装で来る」「椅子があっても学生は座らない」「ガツガツ食べない」の三原則があるそうだ。

 顧問の教授が学生たちに促したことだそうだが、その徹底ぶりには目を見張るものがあった。学生の態度も非常にさわやかで高感度の印象をもつことは言うまでもない。

 電車の中ではかならずと言っていいほど携帯電話のマナーについての放送がある。確かに近くの席で着信音がなるとドキッとして心搏数があがるのがわかる。着信音はバイブレーターにしておいてほしい。また、大声で相手と会話している様子は、気になるし迷惑であるので放送でマナーを促すのでであろう。

 ただ在来線ではデッキがないのでどうしても車内で電話のやりとりをすることになる。私はいつもこうした場合は、雑誌や新聞、または片方の手で口元を隠し、さらに小声でしゃべることによって、なるべく周囲に聞こえないように配慮しているつもりだ。

 新幹線ではいつも車両の最後列の通路側を指定する。電話がかかってきたときにデッキに出やすいためだ。窓側だといちいち隣の方を一人あるいは二人横切って通路にでなくてはいけないので、それも迷惑なことだと察するからだ。

 先日早朝の新幹線での移動で、前の晩の睡眠不足を解消しようと思っていたところ、四列ほど前に今時の女子高生がグループで乗ってきて、楽しくおじゃべりをしていたので、結局一睡もできなかった。もう少し小声で会話をしてくれればいいのにと思っていたが、周りの大人が何も注意しない。よっぽど私が行って注意をしようと思ったが、前後や隣の席ではないので行けなかった。そういう自分が情けなかったが、新幹線の車掌はこういうことにも配慮してほしいと思った。

 マナーというのは、その場にいる人たちが快適な気持ちで過ごせるためのルールであ  るが、昨今あたりまえのことが、あたりまえのようにできなくなってきていることが残念でならない。筑波大のような例は稀であるが、大人がもっと考えていかなければならないことだと痛感している。


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